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数次相続で相続人が1人になったときの遺産分割協議

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(事例)
父A、母B、子Cで、Aが亡くなった後にBが亡くなってCが唯一の相続人となった場合。

 上記事例では、A(第1相続)の相続人はBとCであり、B(第2相続)の相続人はCとなります。第1相続のときにBとCとで遺産分割協議を行わないでいる間に第2相続が発生した際に、C単独で第1相続についての遺産分割協議ができるかどうかということが、約5年前に争いになりました。
 第1相続についてC単独で遺産分割協議ができるとなると、AからCに直接遺産を相続させることができます。一方、それができないとなると、AからBC共有にしたうえでBの共有持分をCに相続させるというように2段階で相続手続きを行う必要が出てきます。結局Cの単独所有になるのだからどちらでもいいじゃないか、と思われるかもしれません。預貯金などの相続についてはどちらでも大差ないのですが、不動産の相続手続きに関しては結構大問題でした。
 不動産の相続登記には登録免許税という税金がかかります。税率は固定資産税評価額の0.4%です。仮にA名義の不動産の評価額が10億円だとしましょう(商業地でビルを所有したら、このぐらいの額にはなります)。A→Cと名義を1回で変更すれば、登録免許税は400万円です。A→BC、B→Cと2回手続きをするとなると、1回目で400万円、2回目はB持分2分の1だけなので200万円となり、合計600万円かかってしまいます。Cが第1相続について1人で遺産分割協議ができると、200万円もの節税ができるわけです。
 従来、登記の現場では1人での遺産分割協議が認められていましたが、5年ほど前にそれを却下する事案が発生し、相続人と国との間で裁判になりました。結論としては、1人での遺産分割協議はできない、という判決が下されました。これに対しては異論もあるのですが、それは別の機会に書くこととします。とにかくそういった結論が出たわけで、最終相続人が複数の場合と1人の場合とで、税金が変わってしまうことになりました。

 ところが、今年の税制改正で次のような特例ができました。

(租税特別措置法 第84条の2の3第1項)
 個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。

 上記事例でいうと、土地の相続については、A→C と A→BC、B→C とで登録免許税に差がなくなりました。しかし、建物については特例の対象となっていないので、依然として数次相続で最終相続人が複数の場合と1名の場合との不平等は解消していません。
 上記の税制特例は、相続登記未了を解消するための施策として設けられたものですが、結果として、数次相続で最終相続人が複数の場合と1名の場合との不平等を軽減することにつながったことは喜ばしいことではあります。登記にかかわる者としては、この特例が時限的なものではなく恒久的なものになることと、土地についてだけでなく建物についても適用されるようになることを願ってやみません。


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