相続案件での経験談①(相続人が多数にのぼるケース)

今回は、相続案件を扱う中で、困難だったケースについて少し話したいと思います。

相続案件で難しいのは、やはり相続人が多数存在するケースです。

とりわけ、一次相続、二次相続と相続が連続して発生しているケースは、相続人の数が相続が発生するたびに増えていってしまいますので、遺産分割協議をまとめあげるのが困難になります。

具体例を示しますと、両親もすでに他界し、配偶者も子もいないある男性(被相続人①とします。)が亡くなり、その相続人は兄弟4人だったとします。その4名で被相続人①の財産について遺産分割協議を完了する前に、その兄弟の一名(被相続人②とします。)が亡くなった場合、亡くなった方に配偶者と子が3名いたとすると、その配偶者と子3人が、被相続人②の遺産を相続することになります。

法定相続割合通りに考えると、被相続人①の遺産について、被相続人②を含む他の相続人4名は、各自4分の1ずつを相続することになりますので、その4分の1を相続した被相続人②がさらに亡くなったことで、4分の1については、被相続人②の相続人である、妻に2分の1、子3人に各6分の1ずつ、相続されることになります。

その結果、被相続人①の遺産は、被相続人②以外の兄弟に、4分の1ずつ相続されることになり、被相続人②の妻に8分の1、子3人に24分の1ずつ、相続されることになります。

もちろん、これは法定の相続割合ですので、これとは別に、相続人間で話し合って割合を決めることも可能です。

さて、それくらいであれば、相続人が劇的に増えるわけではないので、そこまでの手間ではないのですが、例えば、ここからさらに、被相続人①の別の兄弟もすでに亡くなり、その方にお子さんがいらっしゃった場合や、そのお子さんもその後亡くなってしまったような場合には、一気に相続人の数が増えてしまい、たいへんなことになります(このようなことが起こるのは、多くのケースでは、相続手続きをせずにずっと放置していた場合です。何十年も前の相続となると、このように順次相続が起こっていることが多くなります)。

何が大変かというと、例えば被相続人①の名義の不動産があった場合に、それを誰かの名義に変更しなければ、そのままでは売却等処分ができませんので、相続人の皆で遺産分割協議をしなければならず、より具体的には、「遺産分割協議書」を作成する必要があります。そして、そのためには、相続人の全員の署名押印(実印)、印鑑登録証明書が必要となることから、個別に相続人の方々に連絡をとる必要が生じるのです。

それだけ人数が増えてしまうと、人間関係も希薄になっていきますし、いろいろな方がいるため、中には非協力的な方もいたりして、皆が迅速に対応してくれるものでもありません。さらには、順次相続の一番下の方まで行くと、被相続人①の顔も見たことがない、自分が相続人となること自体よくわからない、というような方も当然いますので、そのような方からすると、突然弁護士から「あなたは〇〇氏の相続人となります」と言われても、新手の詐欺では?と思われる方もおり、そのこと自体はやむを得ないとも感じます。。

遺産分割協議というのは、任意の話し合いですので、もしそれでまったく手続きが進まない(つまり、遺産分割協議書に署名押印をしてくれない相続人がいる)場合には、家庭裁判所に、原則として遺産分割調停を申し立てて、原則相続人全員が裁判所にて話し合いを行う、という手続きになりますが、調停に参加することを強制できるものではありませんので、結局、不調に終わることも当然あります。

そうなると、裁判所のほうで、審判というものを出してもらうこともできるのですが、下手をすると、遺産である不動産について、相続人全員の共有、という形の審判が出されてしまう可能性もあります。共有とされてしまった場合には、仮に当該不動産を売却する際も、共有者全員の署名がないと当然売却もできませんので、結局、不動産の処分はできないということにもなりかねません。

法はそのような時のために、共有物分割請求という方法を用意しておりますが、それ自体も容易なものではありません(ここでは脱線するので詳述は控えます)。

このような、相続人多数となり、まったく遺産の処理ができない、という事態を避けるためには、相続が発生した段階で、相続人の方々がきちんと話し合いを行い、場合によっては専門家(争いがあれば弁護士、特に争いはなく不動産の名義変更をすることができるのであれば司法書士)に依頼をしたうえで、迅速に相続手続きを行う、ということに尽きます。

相続の手続きが面倒だということで放置をしてしまうと、結局その不利益を被るのは下の世代となりますので、自分の世代で、発生した相続について対処をする、ということが重要になろうかと思います。

相続が何回も発生し、相続人が多数になるようなケースでは、弁護士だからといって特別なテクニックがあるわけではなく、基本的には一人一人の相続人にアプローチをとるという方法になりますので、そうなってしまう前に、是非ご相談ください。

もちろん、相続が何回も発生してしまっているから、処理することが不可能ということはありませんので、その場合にも、ぜひともご相談ください。


この記事の著者

塚谷翔

弁護士

塚谷翔

相続は、親族間の問題であるからこそ根深い対立を招きがちです。早い段階で専門家に依頼することが重要です。迷ったら是非一度相談してください。私は、サッカーと映画鑑賞をこよなく愛しており、映画の評論をしちゃうような弁護士を目指しています。

札幌 税理士法人ノースブレーン

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