相続基本情報
遺言がある場合の手続き
被相続人(亡くなった人)が遺言を残していた場合、相続手続きは遺言を使って進めていくことになります。相続人の内の1人でも遺言があるのを知らないままで遺産分割協議をした場合は、その協議が無効になります。遺産分割協議書を始める前に、遺言書がないかどうかを調べましょう。
自筆証書遺言の検認
被相続人が自分で書いた遺言を、自筆証書遺言と言います。遺品の中から遺言が見つかった場合に、すぐに封を開けてしまうと過料という罰金が科される場合があります。また、他の相続人から遺言の改ざんの疑いをかけられてしまうかもしれませんので、開封せずにすぐに検認の手続きをとりましょう。
検認とは、遺言があることを相続人全員に知らせ、裁判所が遺言の状態を確定しその現状を明確にすることで改ざんを防ぐという手続きです。遺言の方式や内容が有効かどうかを判断するものではありません。自筆証書遺言は検認済みでないと銀行や法務局が受け付けてくれないため、相続手続きを進めることができません。
検認の流れ
1
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認申立書を提出する。
2
裁判所から相続人全員に対して、検認する日時の通知が届く。
3
検認期日に、申立人や相続人の前で遺言を開封し、遺言の内容を確認する。
(相続人は出席しなくてもかまいません。)
4
検認後、検認証明書が付された遺言の原本が返却される。
遺言保管制度の手続き
被相続人が遺言保管制度を利用していた場合は、法務局で遺言の内容を記載した証明書(遺言書証明情報)を取得することができます。遺言書証明情報は遺言の原本と同じように相続手続きに使用することができ、裁判所の検認も必要ありません。
遺言書証明情報取得の流れ
01
遺言書保管事実証明書を取得して
遺言が保管されているかどうかを確認する
請求先
全国の遺言書保管所に指定されている法務局(郵送可)
法務省 全国の法務局(遺言書保管所)一覧
請求できる人
- 相続人
- 受遺者
- 遺言執行者
必要書類
- 被相続人の死亡がわかる戸籍
- 請求する人の住民票
- 相続人であることがわかる戸籍
02
遺言書証明情報を取得する
請求先
全国の遺言書保管所に指定されている法務局(郵送可)
法務省 全国の法務局(遺言書保管所)一覧
請求できる人
- 相続人
- 受遺者
- 遺言執行者
必要書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 相続人全員の戸籍と住民票
- 請求する人の住民票
※法定相続情報証明があると書類を大幅に省略できます。
03
法務局から相続人に通知が届く
誰かが遺言書証明情報を取得すると、法務局は請求した人以外の相続人全員に遺言書を保管していることを通知します。これにより、裁判所の検認と同じように、相続人全員が遺言書があることを知ることになります。
公正証書遺言の検索
遺品の中に公正証書遺言の正本や謄本が見つからなかった場合は、公証役場で遺言が作成されていないか調べることができます。遺言の検索は無料です。
検索場所
全国の公証役場
検索できる人
- 相続人
- 法律上の利害関係のある人
必要書類
- 被相続人の死亡がわかる戸籍
- 相続人であることがわかる戸籍
- 利害関係を証明する書類
- 身分証
検索で遺言が見つかった場合は、その場で遺言の謄本を取得することができます。費用は1枚につき250円です。
遺言執行
遺言で遺言執行者が指定されていた場合は、遺言執行者が相続財産の管理や遺言の執行をしていくことになります。遺言執行者の主な業務は次のとおりです。
01
遺言内容の通知
遺言の内容を相続人全員に通知する
02
財産目録の作成
被相続人の財産を調査し目録を作成して、相続人全員に交付する
03
遺贈の履行、相続人への分配
遺言の内容に遺贈が含まれていた場合は、遺言執行者が受遺者に対して遺贈の対象とされた遺産を引き渡します。必要に応じて、登記や名義変更の手続きを行います。
不動産などについて売却して代金を分配する旨の記載があれば、売却手続きは遺言執行者が行うことになります。その他、預貯金の相続手続きを代行するなどして、遺言に指定されたとおりに相続人に遺産を分配していきます。
遺言の内容とは異なる方法で遺産を分けたい場合
遺言に書かれている内容が相続人にとって望ましくない場合には、遺言と異なる内容の遺産分割協議をしてもよいとされています。ただし、次の条件が揃っている必要があります。
相続人全員が遺言の存在とその内容を知っている
相続人全員が遺言と異なる遺産分割協議をすることを合意している
相続人以外への遺贈がない
遺言執行者がいない、または遺言執行者の同意がある