相続税について
相続財産の評価
相続税の計算をするには、まずそれぞれの財産を金額で評価しなければなりません。これを財産評価と言い、財産評価によって算出された価額を相続税評価額と言います。
財産評価は、定められた方法に従って財産ごとに行う必要があり、専門的な知識が要求されます。評価者の知識や経験によって相続税評価額が大きく変わる可能性があるため、経験豊富な専門家に相談されることをお勧めいたします。
財産評価についての詳細は「財産評価基本通達」にあり、国税庁のホームページで閲覧が可能です。今回は相続税申告の実務において、よく遭遇するものの評価方法を簡単にご紹介します。また財産評価に必要な資料も併せて紹介しますので、実際の申告準備の際にもお役立てください。
なお、ご紹介するものの中に、“概算の評価額”と“正確な評価額”を併記したものもあります。ご自身の相続について、申告が必要かどうかの簡易チェックをする場合には、概算の評価額で検討するのもおすすめです。
宅地(路線価方式による評価方法)
路線価 × 土地の面積
路線価 × 土地の面積 × 画地調整率 × 利用状況による減額率
評価に必要な資料・情報
- 路線価図(※国税庁のホームページで閲覧が可能です。)
- 登記簿謄本等
- その他(公図、地積測量図等)
市街地にある土地には路線価が設定されているものがあります。路線価とは、相続税の計算における土地1m²あたりの単価のようなイメージです。この路線価に登記簿謄本等で調べた土地の面積を掛けることで概算の評価額は求められます。申告が必要かどうかの簡易チェックのためであれば、この概算の評価額で計算しても概ね問題ありません。
ただし、2つ以上の道路に面している土地の場合には相続税評価額が上がる可能性がありますので十分ご注意ください。
実際に相続税の申告を行う場合には、概算の評価額に、画地調整率(土地の形状等による補正率)や利用状況による減額率を乗じて相続税評価額を算出します。これらの補正割合はほとんどが減額するための割合です。相続税がかかることが判明したら、正確な評価を行い、税額を下げる工夫を行うのがよいでしょう。
宅地(倍率方式による評価方法)
固定資産税評価額 × 所定の倍率
固定資産税評価額 × 所定の倍率 × 利用状況による減額率
必要な資料・情報
- 倍率表(※国税庁のホームページで閲覧が可能です。)
- 固定資産税の納税通知書(亡くなった年のもの)
倍率方式とは、比較的郊外にある土地など、路線価が設定されていない土地の評価方法です。固定資産税の評価額に所定の倍率を掛けることで概算の評価額は求められます。固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書で確認しましょう。
ちなみに固定資産税の納税通知書は毎年5~6月に送られてきます。年の初めに亡くなった場合等は、その年分の納税通知書が来るまでは正確な評価ができません。申告が必要かどうかの簡易チェックのためであれば、昨年の固定資産税評価額を用いて計算しても、概ね問題ないでしょう。
なお、実際の申告の際には、概算の評価額に、利用状況による減額率をかけて相続税評価額を決定します。相続税がかかることが判明したら、正確な評価を行い、税額を下げる工夫を行うのがよいでしょう。
家屋
固定資産税評価額 × 1.0
固定資産税評価額 × 1.0 × 一定の減額率
必要な資料・情報
- 固定資産税の納税通知書(亡くなった年のもの)
- 賃貸借契約書等(貸家の場合)
自宅等の建物で、特殊な事情(一部を賃貸に出している等)がない場合には、原則として、固定資産税の評価額=相続税評価額と思って差し支えありません。
貸家の場合には、さらに一定の減額率を乗じます。空室が少ないほど減額率が高く、満室の場合には30%も評価額を下げることができます。この場合には貸家全体のうち、実際に賃貸している各部屋の面積に応じて賃貸割合を計算するため、賃貸借契約書等の情報が必要になります。
上場株式
単価(※) × 相続開始時保有株式数
※相続開始日終値、開始月・前月・前々月の終値平均のうち、もっとも低い金額
必要な資料・情報
- 取扱金融機関、証券会社発行の残高証明書等
- 相続開始以前2か月分の銘柄ごとの終値、終値平均
※特定の日の株価の推移は日本取引所グループ(JPX)のホームページで確認できます
基本的には金融機関や証券会社発行の残高証明を取得すれば、相続税評価額はほぼ決まります。
しかしその証明額が相続税評価額と一致しないケースも稀に見かけます。実際に相続税申告をする場合には、残高証明を取得したうえで、証明額が相続税評価として適切かどうかを専門家に確認すべきでしょう。
非上場株式
純資産価額、類似業種比準価額のいずれかまたはその折衷額等、もしくは配当還元価額
必要な資料・情報
- 該当する株式会社の直近の決算書等
非上場株式の評価は非常に難解です。ベテランの相続税担当者でないと評価は難しいかもしれません。これは経験則ですが、相続財産に非上場株式が登場する場合はある程度の財産が残されていることが多く、税額も高くなりがちです。
また、その株式を誰が相続するか、今後も持ち続けるのか、何らかの方法で処分するのか、処分時にかかる譲渡所得税はどうするのか等の検討事項も多いように思います。
安易な遺産分割や、根拠のない処分(売却)は絶対に避けるべきです。相続財産に非上場株式が登場した場合には、すぐに専門家にご相談されることをお勧めいたします。
預貯金
相続開始日の残高
相続開始日の残高+相続開始日に解約した場合の利子
必要な資料・情報
- 預金通帳又は取引履歴
- 金融機関発行の残高証明書
- 預金利息計算書
基本的には通帳の相続開始時の残高をみれば、評価額を大きく外すことはありません。申告が必要かどうかの簡易チェックのためであれば、概算評価額として通帳の死亡日時点の額を用いて差し支えありません。
しかし預金から、使途不明な高額出金が多い場合や、名義預金がある場合などは注意が必要です。使途によっては、相続財産に加えなければならないものもあるため、心配であれば専門家の意見を聞くべきでしょう。
死亡退職金
受取金額 - ※非課税枠(500万円×法定相続人の数)
※相続人以外の人が取得した死亡退職金には非課税の適用はありません。
必要な資料・情報
- 退職金の明細や源泉徴収票など
概ね上記の式通りで計算が可能です。
生命保険金
受取金額 - ※非課税枠(500万円×法定相続人の数)
※相続人以外の人が取得した死亡保険金には非課税の適用はありません。
必要な資料・情報
- 保険証券等
- 保険金の払込通知書等
概ね上記の式通りで計算が可能ですが、いくつか注意点があります。
生命保険金と一口に言っても、その性質は様々です。上記の式が当てはまるのは“純粋な死亡保険金”のみで、養老保険、医療(入院)保険、年金タイプの保険などの場合には別の評価となります。
また保険料の負担者、契約者、受取人等が誰かにより、相続税以外(所得税、贈与税)の課税を受ける場合があります。誤った申告をしないよう、内容の判明しない保険契約がある場合には専門家に相談されることをお勧めします。
一般動産
調達価格等
必要な資料・情報
- 動産の情報の資料(車なら車検証等)
一般動産の評価は調達価格をもとに評価を行います。車などの比較的流通しやすいものや、金額がはっきりしたものの評価はたやすいのですが、マイナーな動産や、流通する性質ものではない動産などの評価は難しいです。特殊な一般動産が相続財産にある場合には、まずは専門家にご相談されることをお勧めいたします。
ゴルフ会員権
相場×70%
必要な資料・情報
- ゴルフ会員権
- 入会時の資料
出資金や戻ってくるお金がある場合など評価方法が変わる場合があります。評価に迷う場合にはまずご相談ください。